仕事 ~ 練習問題 part-3
斜面を等速度で物体を引き上げる
水平面となす角$\theta$のなめらかな斜面上で質量$m$の物体を等速度で引き上げる。引き上げた距離が$L$とすると、この時の仕事を求めよ。
解答
軸を設定し、作用する力を書き込む
- 斜面に沿って下向きを$x$軸の正に、斜面に垂直な方向上向きを$y$軸の正に設定する。
- 作用する力は重力$mg\ $面からの抗力$N(R), \ $引き上げる力$F$の3つである。
斜面に沿った成分に分解すると
となる。
運動方程式を立てる
運動方程式は
\begin{eqnarray*}
ma_x &=& mg \sin \theta -F \\
\\
ma_y &=& N-mg \cos \theta
\end{eqnarray*}
となる。
束縛条件$a_y=0$より
\begin{eqnarray*}
ma_x &=& mg \sin \theta -F \\
\\
0&=& N-mg \cos \theta
\end{eqnarray*}
となる。
$x$方向の運動方程式に対して$x$積分すると
\begin{eqnarray*}
m a_x &=& mg \sin \theta -F \\
\\
\int m a_x \diff x &=& \int ( mg \sin \theta -F ) \diff x \\
\\
\int m \frac{\diff v_x}{\diff t} \diff x &=& \int ( mg \sin \theta -F ) \diff x \\
\\
\int m \frac{\diff v_x}{\diff t} v_x \diff t &=& \int ( mg \sin \theta -F ) \diff x \\
\\
\int \frac{\diff}{\diff t} \left( \frac{1}{2}mv_x^2 \right) \diff t &=& \int mg \sin \theta \diff x + \int ( -F ) \diff x \\
\end{eqnarray*}
となる。
この運動で引き上げる速度は等速度なので、左辺は$\Delta K =0$となる。従って、重力の仕事$W_g$と引き上げる力がする仕事$W_{\text{引}}$は
\begin{eqnarray*}
0 &=& \int mg \sin \theta \diff x + \int ( -F ) \diff x \\
\\
\int F \diff x &=& \int mg \sin \theta \diff x
\end{eqnarray*}
である。移動距離が$L$であるから
\begin{eqnarray*}
W_{\text{引}} &=& W_g \\
\\
&=& \int_{0}^{L} mg \sin \theta \diff x \\
\\
&=& [ \left (mg \sin \theta) x \right]_0^L \\
\\
&=& mg \sin \theta \cdot L - mg \sin \theta \cdot 0 \\
\\
&=& mgL \sin \theta
\end{eqnarray*}
となる。
教科書的計算
加えた力を軸に沿って成分を分解すると下図のようになる。
運動方程式は
\begin{eqnarray*}
ma_x &=& mg \sin \theta -F \\
\\
ma_y &=& N-mg \cos \theta
\end{eqnarray*}
となる。
等速度で引き上げて居るので、$a_x = 0$より
\begin{eqnarray*}
0 &=& mg \sin \theta -F \\
\\
F &=& mg \sin \theta
\end{eqnarray*}
となり、引き上げる力$F$は$mg \sin \theta$と同じ大きさであることがわかる。
従って、引き上げた力$F$がした仕事$W_{\text{引}}$は移動した距離が$L$なので
\begin{eqnarray*}
W_{\text{引}} &=& \text{力} \times \text{移動した距離} \\
\\
&=& mg \sin \theta \cdot L \\
\\
&=& mgL \sin \theta
\end{eqnarray*}
となる。