仕事とエネルギー ~ 練習問題 part-4
荒い斜面上の運動
水平面となす角$\theta$の荒い斜面上の$\text{A}$地点に質量$m$の物体が置かれている。この物体に斜面に沿って上向きに初速度$v_0$を与えたところ、$\text{B}$地点まで移動し停止した。停止するまでに動いた距離$L$を求めよ。但し、接触面との間に作用する摩擦力$f$は一定であるとし、動摩擦係数は$\mu_k$する。
解答
軸を設定し、作用する力を書き込む
- 斜面に沿って上向きを$x$軸の正の向きに、斜面に垂直方向上向きを$y$軸の正の向きに設定した。
- 作用する力は重力$mg ,\ $面からの抗力$R$ の2つである。
- 進行方向は斜面に沿って上向きになので抗力$R$は左方向に傾く。
斜面に沿った成分に分解すると
- 分解した成分の矢印が重なるので、矢印の始点をずらして表した。
運動方程式を立てる
運動方程式は
\begin{eqnarray*}
ma_x &=& - mg \sin \theta -f \\
\\
ma_y &=& N - mg \cos \theta
\end{eqnarray*}
となる。
束縛条件より$a_y=0$であるから
\begin{eqnarray*}
ma_x &=& - mg \sin \theta -f \\
\\
0 &=& N - mg \cos \theta
\end{eqnarray*}
となる。
ここで、$f$は摩擦係数の定義$\mu_k = \displaystyle \frac{f}{N}$より
\begin{eqnarray*}
f = \mu_k N =\mu_k mg \cos \theta
\end{eqnarray*}
となる。
仕事を計算する ~ 両辺を$x$で積分する
$x$軸の運動に着目するので$a_x = a$と書き換えて両辺を$x$で積分すると
\begin{eqnarray*}
ma &=& - mg \sin \theta -f \\
\\
m \frac{\diff v}{\diff t} &=& (- mg \sin \theta -f ) \\
\\
\int m \frac{\diff v}{\diff t} \diff x &=& \int (- mg \sin \theta -f) \diff x \\
\\
\int m \frac{\diff v}{\diff t} v \diff t &=& \int (- mg \sin \theta -f) \diff x \\
\\
\int \frac{\diff}{\diff t} \left( \frac{1}{2} mv^2 \right) \diff t &=& \int (- mg \sin \theta) \diff x + \int ( -f) \diff x \\
\end{eqnarray*}
となる。
ここで停止した時刻を$t_1$とし、初期条件を$v(0) = v_0 ,\ v(t_1) = 0 ,\ x(0) = 0 ,\ x(t_1) = L$とすると
\begin{eqnarray*}
\int_{0}^{t_1} \frac{\diff}{\diff t} \left( \frac{1}{2} mv^2 \right) \diff t &=& \int_0^L (- mg \sin \theta) \diff x + \int_0^L ( -f) \diff x \\
\\
\left[ \frac{1}{2} mv^2(t) \right]_{0}^{t_1} &=& [(- mg \sin \theta) x]_{0}^{L} +[-fx]_0^L \\
\\
\frac{1}{2} mv^2(t_1) - \frac{1}{2} mv^2(0) &=& - mgL \sin \theta + (-fL) \\
\\
\frac{1}{2} m\cdot 0^2 - \frac{1}{2}mv_0^2 &=& - mgL \sin \theta + (-fL) \\
\end{eqnarray*}
となる。
ここで摩擦力$f$を
\begin{eqnarray*}
f = \mu_k mg \cos \theta
\end{eqnarray*}
と置き換えると、
\begin{eqnarray*}
- \frac{1}{2}mv_0^2 &=& - mgL \sin \theta + (-\mu_k mg \cos \theta \cdot L) \\
\\
\frac{1}{2}mv_0^2 &=& mgL \sin \theta+ \mu_k mgL \cos \theta
\end{eqnarray*}
となる。
従って移動した距離$L$は
\begin{eqnarray*}
\frac{1}{2}mv_0^2 &=& mgL \sin \theta+ \mu_k mgL \cos \theta \\
\\
\frac{1}{2}mv_0^2 &=& mgL (\sin \theta + \mu_k \cos \theta) \\
\\
L &=& \frac{1}{2}mv_0^2 \cdot \frac{1}{mg(\sin \theta + \mu_k \cos \theta)} \\
\\
&=& \frac{v_0^2}{2g(\sin \theta + \mu_k \cos \theta)}
\end{eqnarray*}
となる。
教科書的計算
運動方程式は
\begin{eqnarray*}
ma_x &=& - mg \sin \theta -f \\
\\
ma_y &=& N - mg \cos \theta
\end{eqnarray*}
となる。
束縛条件より$a_y=0$であるから
\begin{eqnarray*}
ma_x &=& - mg \sin \theta -f \\
\\
0 &=& N - mg \cos \theta
\end{eqnarray*}
となる。
ここで、$f$は摩擦係数の定義$\mu_k = \displaystyle \frac{f}{N}$より
\begin{eqnarray*}
f = \mu_k N =\mu_k mg \cos \theta
\end{eqnarray*}
となる。
従って、運動方程式は$a_x=a$と書き直すと
\begin{eqnarray*}
ma &=& - mg \sin \theta - \mu_k mg \cos \theta
\end{eqnarray*}
となる。
運動方程式より、仕事とエネルギーの関係式は
\begin{eqnarray*}
\frac{1}{2} m\cdot 0^2 - \frac{1}{2}mv_0^2 &=& - mgL \sin \theta + (-\mu_k mg L \cos \theta) \\
\\
\frac{1}{2}mv_0^2 &=& mgL \sin \theta+ \mu_k mgL \cos \theta
\end{eqnarray*}
であるから、移動した距離$L$は
\begin{eqnarray*}
\frac{1}{2}mv_0^2 &=& mgL \sin \theta+ \mu_k mgL \cos \theta \\
\\
\frac{1}{2}mv_0^2 &=& mgL (\sin \theta + \mu_k \cos \theta) \\
\\
L &=& \frac{1}{2}mv_0^2 \cdot \frac{1}{mg(\sin \theta + \mu_k \cos \theta)} \\
\\
&=& \frac{v_0^2}{2g(\sin \theta + \mu_k \cos \theta)}
\end{eqnarray*}
となる。
- 始めの運動エネルギー$K(0)$が、重力がした仕事$W_g$と摩擦力の仕事$W_\text{摩}$になったと考えることができる。
- 今回は、運動方程式から仕事とエネルギーの関係式まで間を省いて記述した。試験でも特に記載が無ければ問題ないと思う。具体的な計算については仕事とエネルギーの他の練習問題を参照のこと。