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力学

仕事とエネルギー ~ 練習問題 part-2

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仕事とエネルギー ~ 練習問題 part-2

滑らかな斜面を引き上げる運動

 水平面となす角$\theta$のなめらかな斜面上に置かれた質量$m$の物体に一定の力$F$を加え続けて$\text{A}$地点から$\text{B}$地点まで距離$L$だけ移動させた。$\text{A}$地点での初速度を$v_0$として以下の問に答えよ。

(1) この運動の間に重力$mg$がした仕事$W_g$を求めよ。

(2) この運動の間に力$F$がした仕事$W_F$を求めよ。

(3) この運動の間に垂直抗力$N$がした仕事$W_N$を求めよ。

解答

軸を設定し、作用する力を書き込む

  • 斜面に沿って上向きを$x$軸の正の向きに、斜面に垂直方向上向きを$y$軸の正の向きに設定した。
  • 作用する力は重力$mg ,\ $面からの抗力$N(R) ,\ $加える力$F$ の3つである。

斜面に沿った成分に分解すると

運動方程式を立てる

運動方程式は
\begin{eqnarray*}
ma_x &=& F - mg \sin \theta \\
\\
ma_y &=& N - mg \cos \theta
\end{eqnarray*}
となる。

ここで、運動方程式をベクトル表記に書き換えると、

\begin{eqnarray*}
m \vec{a} &=& \vec{F} \\
\\ m
\begin{pmatrix}
a_x \\
a_y \\
\end{pmatrix} &=&
\begin{pmatrix}
F_x \\
F_y \\
\end{pmatrix}\\
\\ m
\begin{pmatrix}
a_x \\
a_y \\
\end{pmatrix} &=&
\begin{pmatrix}
F - mg \sin \theta \\
N - mg \cos \theta \\
\end{pmatrix}
\end{eqnarray*}
となる。

仕事を計算する ~ 両辺を$\diff \vec{r}$で積分する

両辺を$\diff \vec{r}$の内積を取って全体を積分すると

\begin{eqnarray*}
m \vec{a} &=& \vec{F} \\
\\
\int m\frac{\diff \vec{v}}{\diff t} \cdot \diff \vec{r} &=& \int \vec{F} \cdot \diff \vec{r} \\
\\
\int m\frac{\diff \vec{v}}{\diff t} \cdot \vec{v} \diff t &=& \int \vec{F} \cdot \diff \vec{r} \\
\\
\int \frac{\diff}{\diff t} \left( \frac{1}{2}mv^2 \right) \diff t &=& \int \vec{F} \cdot \diff \vec{r} \\
\\
\int \frac{\diff}{\diff t} \left( \frac{1}{2}mv^2 \right) \diff t
&=& \int
\begin{pmatrix}
F_x \\
F_y \\
\end{pmatrix} \cdot
\begin{pmatrix}
\diff x \\
\diff y \\
\end{pmatrix} \\
\\
\int \frac{\diff}{\diff t} \left( \frac{1}{2}mv^2 \right) \diff t
&=& \int F_x \diff x + \int F_y \diff y \\
\\
\int \frac{\diff}{\diff t} \left( \frac{1}{2}mv^2 \right) \diff t
&=& \int (F - mg \sin \theta) \diff x + \int (N - mg \cos \theta) \diff y \\
\\
\int \frac{\diff}{\diff t} \left( \frac{1}{2}mv^2 \right) \diff t
&=& \int F \diff x + \int (-mg \sin \theta ) \diff x + \int N \diff y + \int (-mg \cos \theta ) \diff y
\end{eqnarray*}

となる。

$y$方向には変位しない(斜面から浮かない、めり込まない)。

従って、
重力がする仕事$W_g$は

\begin{eqnarray*}
W_g&=& W_{g_x} + W_{g_y} \\
\\
&=& \int_0^L ( - mg \sin \theta) \diff x + \int_{0}^{0} (-mg \cos \theta) \diff y \\
\\
&=& \left[ ( - mg \sin \theta) \cdot x \right]_0^L +0 \\
\\
&=& ( - mg \sin \theta) \cdot L -( - mg \sin \theta) \cdot 0 \\
\\
&=& - mgL \sin \theta
\end{eqnarray*}

となり、

加えた力がする仕事$W_F$は

\begin{eqnarray*}
W_F &=& \int_0^L F \diff x \\
\\
&=& \left[ F \cdot x \right]_0^L \\
\\
&=& F \cdot L - F \cdot 0 \\
\\
&=& FL
\end{eqnarray*}
となり、

垂直抗力がする仕事は

\begin{eqnarray*}
W_N &=& \int_{0}^{0} N \diff y \\
\\
&=& 0\\
\end{eqnarray*}

となる。

仕事とエネルギーの関係式は

となる。

教科書的計算

作用する力を軸に沿って成分を分解すると下図のようになる。

(1)
重力がした仕事$W_g$は力が$- mg \sin \theta$で移動した距離が$L$なので

\begin{eqnarray*}
W_{g} &=& \text{力} \times \text{移動した距離} \\
\\
&=& -mg \sin \theta \cdot L \\
\\
&=& -mgL \sin \theta
\end{eqnarray*}
となる。

(2)
加えた力がした仕事$W_F$は力が$F$で移動した距離が$L$なので

\begin{eqnarray*}
W_F &=& \text{力} \times \text{移動した距離} \\
\\
&=& F \cdot L \\
\\
&=& FL
\end{eqnarray*}
となる。

(3)
垂直抗力がした仕事$W_N$は垂直抗力と変位の向きが垂直なので$\cos 90^{\circ} =0$より

\begin{eqnarray*}
W_{N} &=& 0
\end{eqnarray*}
となる。




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